人生100年時代と言われる今日。まだまだ先のことと思いながらも、早い段階で終活を考えたり、実際に準備を始めたりされる方も少なくありません。一昔前は、遺言や終活というと縁起でもないと敬遠される方もいらっしゃいましたが、最近では、計画的に終活に取り組まれる方も増えてまいりました。40代、50代の方からの遺言の相談も増加傾向にございます。今日は、遺言について見てみましょう。
自筆証書遺言
目次
1.遺言の種類
2.自筆証書遺言
3.公正証書遺言
4.公証役場の手数料
5.必要書類
1.遺言の種類
遺言の種類:
遺言の方式は、民法に定められており、次の3つの方式があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
遺言ができる方:
15歳になった者は、遺言をすることができます(民法961条)。
成年被後見人による遺言:
では、15歳以上であれば、認知症など成年被後見人は遺言を作成することはできるでしょうか。
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時は遺言をすることができます。その場合、医師二人以上の立会いが必要です(同法973条1項)。
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時に、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、署名と押印をする必要があります。なお、秘密証書遺言の場合は、その封紙にその旨を記載し、署名と押印をすることとなります(同法973条2項)。
上記のとおり、一時回復した時は遺言をすることができるとされておりますが、判断能力が十分な状態でなく、遺言を作成できない可能性も高いため、留意が必要です。
2.自筆証書遺言
自筆証書によって遺言をするには:
- 全文、日付、氏名を自書し、印を押す必要があります(民法968条1項)。
- 自筆証書遺言に相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合、その目録は自書する必要はありません(同条2項)。例えば、不動産の登記簿謄本や通帳のコピーを目録として添付することができます。
- この場合、目録の各ページ(両面の場合はその両面)に署名し、印を押します(同条2項)。
- 自筆証書(目録を含む)を修正・変更する場合は、変更する場所に変更した旨を付記して署名かつ押印しなければなりません(同条3項)。そうしないと無効になります。間違ったときは、書き直すことをお勧めします。
3.公正証書遺言
公正証書遺言の方式:
公正証書によって遺言をする場合は、次に掲げる方式に従わなければなりません(民法969条)。
- 証人2人以上の立会いがあること(同条1項)
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(同条2項)
- 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること(同条3項)
- 遺言者と証人が、筆記が正確なことを承認し、各自署名し押印します(同条4項)
- 但し、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます(同条同項)
- 公証人が、証書について、上記各方式に従って作ったものである旨を付記して、署名し押印します(同条5項)
公正証書遺言の方式の特則:
- お話ができない方が公正証書によって遺言をする場合には、上記の口授の代わりに、公証人と証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、または自書しなければなりません(民法969条の2 第1項)。
- 遺言者または証人が耳が聞こえない方である場合には、公証人は、筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者またはは証人に伝えて、読み聞かせに代えることができます(同条2項)。
- 公証人は、上記の方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければなりません(同条3項)。
公正証書遺言の証人:
以下の方は公正証書遺言の証人または立会人となることはできません(同法974条)。
- 未成年者
- 推定相続人、受遺者、これらの配偶者と直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記と使用人
4.公証役場の手数料
公正証書遺言の作成手数料(公証役場に支払うもの):
財産の価額 | 手数料 |
100万円以下 200万円以下 500万円以下 1000万円以下 3000万円以下 5000万円以下 1億円以下 3億円以下 10億円以下 10億円超 | 5000円 7000円 1万1000円 1万7000円 2万3000円 2万9000円 4万3000円 4万3000円+5000万円ごとに1万3000円を加算 9万5000円+5000万円ごとに1万1000円を加算 24万9000円+5000万円ごとに8000円を加算 |
遺言加算:
全体の財産が1億円以下のときは、上記表によって算出された手数料額に、1万1000 円を加算します。これを「遺言加算」といいます。
遺言加算:
遺言公正証書の作成が嘱託人の病床で行われたときは、上記表によって算出された手数料額に、50 %加算されることがあるほか、遺言者が、病気または高齢等のために体力が弱り、公証役場に赴くことができず、公証人が、病院、ご自宅等に赴いて、遺言公正証書を作成する場合には、公証人の日当と、現地までの交通費が掛かります。
その他の留意点:
- 相続・遺贈を受ける人ごとに、財産の価額を算出し、上記基準表に当てはめて手数料額を求め、それらの手数料を合算して、全体の手数料を算出します。
- 遺言公正証書は、通常、原本、正本および謄本を各1部作成し、原本は公証役場で保管し、正本および謄本は遺言者に交付されます。その手数料は以下のとおりです。
原本 | 枚数が4枚(横書公正証書は3枚)を超えるときは、 超える1枚ごとに250円の手数料が加算 |
正本及び謄本の交付 | 1枚につき250円の手数料が必要 |
5.必要書類
自筆証書遺言:
- 本人様確認資料(運転免許証またはマイナンバーカード等)
- 戸籍謄本(遺言者と相続人との続柄が分かるもの)
- 相続人以外の受遺者については、住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの
- 相続財産に不動産があるときは登記簿謄本
- 相続財産である預金口座の通帳のコピー(表紙、見開き1頁目)
- 遺言執行者となる方の名前・住所・生年月日が分かる資料
公正証書遺言:
- 本人様の印鑑証明書と実印
- 本人様確認資料(運転免許証またはマイナンバーカード等)
- 戸籍謄本(遺言者と相続人との続柄が分かるもの)
- 相続人以外の受遺者については、住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの
- 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
- 相続財産に不動産があるときは登記簿謄本
- 相続財産である預金口座の通帳のコピー(表紙、見開き1頁目)
- 遺言執行者となる方の名前・住所・生年月日が分かる資料(住民票や運転免許証のコピー等)(※相続人または受遺者以外の方を遺言執行者とする場合)
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