成年年齢の引き下げ

日本における成年年齢は、1876年(明治9年)以来、20歳とされていましたが、成年年齢を引き下げる改正民法が2022年4月1日に施行されました。成人の日の本日は、成年年齢を引き下げに関する民法改正について見てみましょう

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成年年齢の引き下げ

目次

1.成年年齢の引き下げに関する改正民法

2.成年になるとできること

3.いつから適用されるか

4.成年年齢の引き下げによる影響

1.成年年齢の引き下げに関する改正民法

成年年齢を引き下げる民法改正に先立ち、近年、憲法改正国民投票の投票権年齢や,公職選挙法の選挙権年齢などを18歳とする政策が進められてきました。こうした政策を踏まえ、若者の自己決定権を尊重し、その積極的な社会参加を促すものとし、市民生活に関する基本法である民法においても、成年年齢を18歳に引き下げる法案が可決されました。      

’関連条文’
民法
(成年)
第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。

        

2.成年になるとできること

民法における成年の意味:

民法の成年年齢には、以下の意味があります。

  • 一人で有効な契約をすることができる
  • 父母の親権に服さなくなる     

成年になるとできるようになること:

有効な法律行為

未成年が契約などの法律行為をするには、法定代理人、すなわち親の同意が必要です。成年になると、親の同意を得ずに、様々な契約をすることができるようになります。

  • 携帯電話の契約
  • 高額商品の購入(ローンによる購入を含む)
  • クレジットカードを作成する
  • アパートを借りる契約、等々

父母の親権に服さない

成年になると、父母の親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めることができるようになります。    

’関連条文’
民法
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

その他

その他にもできるようになることがあります。

  • 10年有効パスポートの取得
  • 公認会計士、司法書士等、国家資格に基づく職業に就くこと
  • 性別の取扱いの変更審判を受けること 等

上記のように、これまでは20歳になるとできたことが、成年年齢の引き下げにより18歳からできるようになります。

          

3.いつから適用されるか

いつから適用されるか

成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」は、2022年4月1日から施行となります。

2002年4月2日~2004年4月1日生まれ
(2022年4月1日時点で18歳以上20歳未満)
2022年4月1日に成年に達する
2004年4月2日生まれ以降18歳の誕生日に成年に達する

なお、2022年4月1日より前に18歳、19歳の方が親の同意を得ずに締結した契約は、施行後も引き続き取り消すことができます。

          

4.成年年齢の引き下げによる影響

未成年者取消権:

未成年者が親の同意を得ずに契約した場合には、原則、取消すことができるとされています(民法5条2項)。

この未成年者取消権は、未成年者を保護するためのものですが、成年年齢が18歳に引き下げられたことにより、18歳, 19歳の方は未成年者取消権を行使することができなくなるため、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されています。

これに対して政府は、小・中・高等学校等における消費者教育の充実(例:契約の重要性,消費者の権利と責任など)や、若者に多い消費者被害を救済するための消費者契約法の改正、消費者ホットライン等の相談窓口の充実など様々な環境整備の施策に取り組んでいます。司法書士会でも、法律教育の開催や消費者相談に取り組んでいます。

消費者庁HP 消費者ホットラインについてはこちらから確認できます。

子の養育費:

改正民法施行前に、子の養育費について、「子が成年に達するまで養育費を支払う」との取決めがされいた場合はどうなるでしょうか。これについては、取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことから、成年年齢が引き下げられても、従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられます。

養育費は、子が未成熟で経済的自立が期待できない場合に支払われるものであるため、子が成年に達したとしても経済的に未成熟である場合には、養育費を支払う義務を負うことになります。このため、成年年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。

なお、今後新たに養育費に関する取決めをする場合には、明確に支払期間の終期を定めることが望ましいと考えられます(例:「22歳に達した後の3月まで」等)。

お酒や煙草は?

民法の成年年齢が18歳に引き下げられても、以下の事項については、健康被害への懸念や依存症対策などの観点から、従来どおり20歳の年齢制限が維持され、18歳、19歳の方はすることができません。

  • 飲酒
  • 喫煙
  • 公営競技(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)


参考サイト:法務省HP 民法(成年年齢関係)改正Q&A

       

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