代償分割における遺産分割協議書

相続のご相談の中でお受けることが多い「遺産分割協議書」についてのご質問のうち、代償分割について触れたいと思います。

代償分割における遺産分割協議書

目次

1.遺産分割協議とは

2.代償分割とは

3.産分割協議書はどう記載する?

4.不動産の名義変更登記が必要

5.最後に

1.遺産分割協議とは

遺産の分割については、民法906条以下に規定があります。

相続人は、亡くなった被相続人が遺言で禁止した場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(同907条1項)。これを、遺産分割協議と言います。

遺産分割の方法には、以下の種類があります。

現物分割 遺産を「現物」で分割する
換価分割 遺産を売却等して「換価」し、その代金を分割する
代償分割 遺産を取得する相続人が、その「代償」として他の相続人に対して債務を負担する

2.代償分割とは

代償分割については、家事手続法195条に規定があります。

(債務を負担させる方法による遺産の分割)

第195条 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる。

1つ事例を見てみましょう。

例えば、遺産として土地と建物(評価額6000万円)、預貯金2000万円を残して父が亡くなったとします。母(父の妻)は既に他界しており、相続人は兄と弟だけです。

この場合において、法定相続分どおりに相続した場合は、以下のようになります。

・土地:兄2分の1、弟2分の1 の共有

・建物:兄2分の1、弟2分の1 の共有

・預貯金:兄1000万円、弟1000万円

ここで、父が生前に、自宅の土地建物については、長男に引き継いでもらいたいと思っていた場合はどうでしょうか。兄は6000万円の価値ある不動産を相続し、弟は2000万円の預貯金のみを相続することとなります。

これでは不公平と感じた父が、遺言で、長男が不動産を引き継ぐ代わりに、弟にその分のお金を支払うように、と記載していた場合はどうなるでしょうか。公平となるには、兄は2000万円を弟に支払わなければなりませんが、お金がない場合はどうなるでしょうか。

この場合、兄弟が遺産分割協議を行い、合意の上、別の内容を定めることもできます。

不動産については、上記のとおり2人の共有としてもよいですし、売却して得た代金を分けることもできます(換価分割)。そして、兄が他にも不動産をもっていた場合、お金の代わりにその不動産を弟に渡すこともできます(代償分割)。

3.遺産分割協議書はどう記載する?

上記2のように、兄が弟に、別の不動産を渡すことで代償分割したときは、遺産分割協議書はどのように記載すればよいでしょうか。

【例】


・相続人ジェネラス太郎(長男)は、被相続人の名義の次の不動産を相続する。
 
不動産の表示

・相続人ジェネラス太郎(長男)は、上記不動産を相続する代償として、遺産分割による贈与を原因とし、自己が所有する次の不動産を相続人ジェネラス二郎(次男)に贈与し、相続人ジェネラス二郎(次男)はこれを受諾する。
 
不動産の表示

なお、代償としてお金を払う場合の記載例は、以下のとおりです。

・相続人ジェネラス太郎(長男)は、上記不動産を相続する代償として、相続人ジェネラス二郎(次男)に金2000万円を支払う。

遺産分割協議書の記載は、登記申請においても(税金の面においても)重要となりますので、専門家に確認の上、作成されることをお勧めします。

4.不動産の名義変更登記が必要

相続により不動産の所有権を取得したとき、また、代償分割により不動産の所有権を取得したときは、不動産の名義を変更する登記申請が必要となります。

登記申請の際には、遺産分割協議書の添付が必要となりますので、しっかりと作成しておきましょう。なお、この場合の登記原因は「年月日遺産分割による贈与」(昭和40年12月17日民事甲第3433号民事局長回答)となります。この年月日は、遺産分割協議が成立した日とされています。

登録免許税は以下のとおりとされています。

相続を原因とする場合不動産の課税価格×1000分の4
遺産分割による贈与を原因とする場合不動産の課税価格×1000分の20

変更となることもございますので、登記申請の際は、管轄法務局に確認の上、申請することをお勧めいたします。

5.最後に

代償分割については、贈与税などの税務上の問題点が生じる可能性もございます。

贈与とみなされることがなきよう、一般的には、遺産分割協議書に代償分割であることを明記し、保存しておく必要があるものとされておりますが、その他にも、相続する遺産の評価額を上回る金額を支払った場合、その上回る分は贈与とみなされるものとされております。

贈与税については、税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。


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