土地の賃貸借期間について

一口に土地を借りるといっても、その土地上に建物を所有するのか、駐車場や物置等として借りたいのか、その目的によって適用される法律が異なります。土地を借りる際は、借地契約や賃貸借契約を締結しますが、締結した時期によっても、法改正により適用される規定内容が異なる場合があります。本日はこれらの点に着目しつつ、土地の賃貸借期間を中心に見てみましょう。

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土地の賃貸借期間について

目次

1.土地の賃貸借にはどの法律が適用されるか?

2.土地の賃貸借期間

3.更新後の期間

4.定期借地権とは

5.建物所有を目的としない土地の賃貸借

    

1.土地の賃貸借にはどの法律が適用されるか?

土地上に建物がある場合:

賃貸借契約の成立時期適用される法律
1922年(平成4年)7月31日まで旧借地法
1922年(平成4年)8月1日以降借地借家法

参考条文:借地借家法1条・2条1号、旧借地法1条

              

土地上に建物がない場合:

民法が適用されます。

2.土地の賃貸借期間

旧借地法による場合:

【1922年(平成4年)7月31日までに契約締結した場合】

契約期間適用される法律期間
定めなし旧借地法2条1項堅固建物  60年
非堅固建物 30年(*1)
定めあり旧借地法2条2項堅固建物  30年以上
非堅固建物 20年以上(*2)

(*1) 契約で、建物の種類・構造を定めなかった場合は、非堅固建物所有目的とみなされ、契約期間は30年となります(旧借地法3条)。

(*2) これらより長い期間を定めることができますが、短い期間を定めることはできず、期間の定めのない契約とみなされます(旧借地法11条)。

            

借地借家法による場合:

【1922年(平成4年)8月1日以降に契約締結した場合】

契約期間適用される法律期間
定めなし借地借家法3条30年
定めあり借地借家法3条30年以上*

* 契約でこれより短い期間を定めた場合は、30年となります。

    

※ 契約でこれらより不利な内容を定めても無効となります(借地借家法9条、旧借家法11条)。

           

3.更新後の期間

旧借地法による場合:

【1922年(平成4年)7月31日までに契約締結した場合】

建物の種類・構造適用される法律更新期間*
堅固建物旧借地法5条1項30年以上
非堅固建物旧借地法5条1項20年以上

* 上限はありません(旧借地法5条2)。

* 契約が更新されても借地借家法でなく「旧借地法」が適用されます。

                  

借地借家法による場合:

【1922年(平成4年)8月1日以降に契約締結した場合】

更新適用される法律更新期間*
1回目借地借家法4条20年
2回目以降借地借家法4条10年

* 契約でこれより長い期間を定めることができます(借地借家法4条但書)。

※ 契約でこれらより不利な内容を定めても無効となります(借地借家法9条、旧借家法11条)。

            

4.定期借地権とは

上記のとおり、借地借家法には、土地の借主を保護する強い規定がおかれています。但し、これには以下のような例外があります。


定期借地権:

存続期間を50年以上として借地権を設定した場合は、契約更新をしないこと、建物の築造による存続期間の延長がないこと、土地上の建物の買取り請求をしないことを特約で定めることができます。この特約は、公正証書による等書面によってする必要があります(借地借家法22条1項)。

     

事業用定期借地権等:

事業に使用する建物(居住を目的とするものを除く)の所有を目的として、存続期間を35年以上50年未満として借地権を設定した場合は、契約更新をしないこと、建物の築造による存続期間の延長がないこと、土地上の建物の買取り請求をしないことを特約で定めることができます(借地借家法23条1項)。

事業に使用する建物の所有を目的として、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定した場合は、借地借家法3条から8条(契約更新・存続期間の延長13条(建物の買取り請求)、18条(裁判所の建物再築の許可)は適用されません(借地借家法23条2項)。

これらの契約は、公正証書によってする必要があります(借地借家法23条3項)。  

    

建物譲渡特約付借地権:

借地権を消滅させるため、借地権設定後30年以上を経過した日に、土地の上の建物を、土地の貸主に対し、相当の対価で譲渡する旨を定めることができます(借地借家法24条1項)。

これより借地権が消滅した場合に、土地の借主(又は建物使用を継続している建物の賃借人)が請求したときは、請求の時にその建物につき、土地の借主(又は建物使用を継続している建物の賃借人)と、土地の貸主との間で、期間の定めのない賃貸借(借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなされます(借地借家法24条2項)。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定めることになります。

                 

5.建物所有を目的としない土地の賃貸借

民法による場合

建物の所有を目的としない土地の賃貸借は、借地借家法ではなく、民法の規定が適用されます。

なお、賃貸借期間に関する民法規定が改正されており、賃貸借の存続期間に注意が必要です。

賃貸借契約の成立時期適用される法律期間
2020年(令和2年)3月31日まで改正前民法604条20年以下
2020年(令和2年)4月1日以降改正後民法604条50年以下
’関連条文’
民法

(賃貸借の存続期間)
第604条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

               

期間を定めなかった場合:

建物の所有を目的としない土地の賃貸借契約について、期間を定めなかったときはどうなるでしょうか。この場合、契約当事者はいつでも解約申入れをすることができ、その申入れの日から1年を経過することにより賃貸借契約は終了します(民法617条)。

’関連条文’
民法

(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。

         

なお、賃貸借期間が満了した場合でも、契約終了の手続等を取らずに放置しておくと、契約更新したものと推定されることがあるため注意が必要です。

’関連条文’
民法

(賃貸借の更新の推定等)
第619条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第622条の2第1項に規定する敷金については、この限りでない。

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