株式会社は一定の場合に解散します。解散した場合は、解散登記を申請し、官報報告を掲載し、法定期間経過後に清算結了登記を申請します。本日は、株式会社の解散の登記についてみてみましょう。

株式会社の解散の登記
目次
1.株式会社が解散するときとは
2.解散したらどうなるの
3.解散したときにする登記申請は
4.登記官による職権抹消
5.みなし解散登記がされたとき
6.清算結了の登記
1.株式会社が解散するときとは
(1)株式会社の解散事由
会社法は、株式会社の解散事由として、以下の事由を規定しています(会社法471条)。
以下の事由に該当した場合、株式会社は解散することになります。
| 1 | 定款で定めた存続期間の満了 |
| 2 | 定款で定めた解散の事由の発生 |
| 3 | 株主総会の決議 |
| 4 | 合併による消滅 |
| 5 | 破産手続開始の決定 |
| 6 | 824条1項または833条1項の規定による解散を命ずる裁判 |
(2)みなし解散
この他、最後に登記をしてから12年が経過した株式会社は休眠会社となり、この休眠会社に該当した場合、解散したものとみなされる可能性があります(会社法472条、みなし解散)。
休眠会社についてはリンクをご確認ください。
2.解散したらどうなるの
株式会社は、解散した場合、清算しなければなりません(会社法475条)。清算する株式会社(精算株式会社)は、清算の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなされます(会社法476条)。
(1)清算株式会社の機関
そして清算株式会社は、
| 1 | 一人又は二人以上の清算人を置かなければなりません。 |
| 2 | 定款の定めによって、清算人会、監査役又は監査役会を置くことができる。 |
| 3 | 監査役会を置く旨の定款の定めがある清算株式会社は、清算人会を置かなければなりません。 |
| 4 | 公開会社又は大会社だった場合は、監査役を置かなければなりません。 |
| 5 | 監査等委員会設置会社であった場合で、前4の規定の適用があるものにおいては、監査等委員である取締役が監査役となります。 |
| 6 | 指名委員会等設置会社であった場合で、前4の規定の適用があるものにおいては、監査委員が監査役となる。 |
| 7 | 株主総会以外の機関の設置に関する規定(会社法第4章第2節)は、清算株式会社については適用されません。 |
(2)清算人の職務
清算人は、次の職務を行います(会社法481条)。
| 1 | 現務の結了 |
| 2 | 債権の取立て及び債務の弁済 |
| 3 | 残余財産の分配 |
(3)清算会社の監査役
清算会社が次の定款変更をした場合は、清算会社の監査役は、定款変更の効力発生時に退任することになります(会社法480条)。
| 1 | 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更 |
| 2 | 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更 |
つまり、監査役を廃止するには、上記定款変更が必要ということになります。
(4)財産目録等の作成
清算人は、就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、清算の開始原因(会社法475条各号)に該当することとなった日における財産目録及び貸借対照表(財産目録等)を作成しなければなりません(会社法492条1項)。
そして、清算人は、財産目録等を株主総会に提出又は提供し、承認を受ける必要があります。(同3項)。
なお、清算人会設置会社の場合、財産目録等は、清算人会の承認を受ける必要があります。
また、清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(清算の開始原因(会社法475条各号)に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各1年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成する必要があります(会社法494条1項)。
清算株式会社は、貸借対照表を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該貸借対照表及びその附属明細書を保存しなければなりません(同3項)。
3.解散したときにする登記申請は
株式会社が解散したときは、解散登記・清算人の選任登記を申請し、官報報告を掲載し、法定期間経過後に清算結了登記を申請します。
株式会社の解散および清算人選任の登記
| 登記の事由 | 解散 年月日清算人及び代表清算人の選任 清算人会設置会社の定め設定(清算人会を設置した場合) |
| 登記すべき事項 | 「解散」 年月日株主総会の決議により解散(株主総会決議で解散した場合) 「役員に関する事項」 「資格」清算人 「氏名」〇〇〇〇 「役員に関する事項」 「資格」清算人 「氏名」〇〇〇〇 「役員に関する事項」 「資格」清算人 「氏名」〇〇〇〇 「役員に関する事項」 「資格」代表清算人 「住所」〇〇〇〇 「氏名」〇〇〇〇 「清算人設置会社に関する事項」 清算人会設置会社 (清算人会を設置した場合) |
| 添付書類 | 株主総会議事録 ※1 株主リスト 定款 ※2 就任承諾書 ※2 清算人会議事録 ※3 委任状 (代理人に委任した場合) |
| 登録免許税 | 金39,000円 この内訳は: ・解散の登記:30,000円 ・清算人及び代表清算人の選任に関する登記:9,000円(清算人会設置会社の場合も同様) |
| 申請 | 代表清算人が申請します。 |
※1 株主総会議事録:株主総会の決議により解散する場合に添付
(存続期間満了による解散の場合は、登記上明らかなので添付書類不要)
※1※2※3
清算人に関する添付書類
| 取締役がそのまま法定清算人となった場合 | 定款 | ー | ー |
| 定款で定められた者が清算人となった場合 | 定款 | 就任承諾書 | ー |
| 株主総会決議で清算人が選任された場合 | 定款 | 就任承諾書 | 株主総会議事録 |
| 裁判所が定めた者が清算人となった場合 | 定款 | ー | 選任決定書製本 (又は認証ある謄本) |
代表清算人に関する添付書類
| 代表取締役がそのまま法定代表清算人となった場合 | |||
| 定款で定められた者が代表清算人となった場合 | 定款 | ||
| 定款規定により清算人の互選で代表清算人が選定された場合 | 定款 | 就任承諾書 | 清算人の過半数の一致を証する書面 |
| 株主総会決議で代表清算人が選定された場合 | 株主総会議事録 | ||
| 裁判所が定めた者が清算人となった場合 | 選任決定書製本 (又は認証ある謄本) | ||
| 清算人会で代表清算人が選定された場合 | 就任承諾書 | 清算人会議事録 ※3 |
4.登記官による職権抹消
解散登記(会社法471条、472条1項本文)をしたときは、合併による消滅(会社法471条4号)および破産手続開始決定(同5号)による場合を除き、次に掲げる登記を抹消する記号を記録しなければならないとされています(商業登記規則72条1項)。これらの登記は、登記官の職権で抹消されます。
| 1 取締役会設置会社である旨の登記、取締役、代表取締役、社外取締役に関する登記 2 特別取締役による議決の定めがある旨の登記、特別取締役に関する登記 3 会計参与設置会社である旨の登記、会計参与に関する登記 4 会計監査人設置会社である旨の登記、会計監査人に関する登記 5 監査等委員会設置会社である旨の登記、監査等委員である取締役に関する登記、重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがある旨の登記 6 指名委員会等設置会社である旨の登記、委員、執行役及び代表執行役に関する登記 |
ここには監査役は含まれていないので、もし監査役を設置している株式会社が解散登記をする場合は、監査役の退任、監査役設置会社の定めの廃止の登記も申請する必要があります。
この場合、上記に追加して、以下の登録免許税が必要となります。
| 監査役の変更 | 30,000円(or10,000円) |
| 監査役設置会社の定めの廃止 | 30,000円 |
5.みなし解散登記がされたとき
法務局では、毎年、休眠会社・休眠一般法人の整理作業を行っており、毎年10月頃、法務大臣による官報公告が行われ、休眠会社または休眠一般法人に対して、登記所から通知書が送付されます。
この公告から2か月以内に役員変更等の必要な登記または「まだ事業を廃止していない」旨の届出がされないときには、その2か月の期間の満了の時に解散したものとみなされ、実際には事業を継続していたとしても、登記官により職権で解散の登記がされます(会社法472条)。この登記を、みなし解散の登記と言います。
登記例
| 解散 | 年月日会社法第472条第1項の規定により解散 年月日登記 |
みなし解散の登記がされた場合、上記4のとおり、取締役等の登記は職権により抹消されますが、清算人の登記はされません。みなし解散登記がされた時点で、定款に別段の定めがない限り、法定清算人(取締役)が選任されますが、株式会社が自ら、清算人選任の登記をする必要があります。
なお、従前の取締役以外の者を清算人として選任したい場合は、一度法定清算人の選任の登記をしたうえで、辞任等による退任の登記と新たに選任した清算人の選任の登記を申請する必要があります。
6.清算結了の登記
清算が結了したときは、次の各号に掲げる会社の区分に応じ、当該各号に定める日から2週間以内に、その本店の所在地において、清算結了の登記をしなければなりません(会社法929条)。
| 1 | 清算株式会社 | 決算報告について株主総会の承認の日(会社法507条3項) |
| 2 | 清算持分会社(合名会社及び合資会社) | 清算事務が終了後、清算に係る計算について、社員の承認の日(会社法667条1項) (会社の668条1項の財産の処分の方法を定めた場合は、財産の処分を完了した日) |
| 3 | 清算持分会社(合同会社) | 清算事務が終了後、清算に係る計算について、社員の承認の日(会社法667条1項) |
清算結了登記
| 登記の事由 | 清算結了 |
| 登記すべき事項 | 年月日清算結了 ※ |
| 添付書類 | 株主総会議事録 (決算報告書を含む) 株主リスト 委任状 (代理人に委任した場合) |
| 登録免許税 | 金2,000円 |
| 申請 | 代表清算人が申請します。 |
※ 株主総会において決算報告書を承認した日。なお、清算人の就任後2か月以内に清算が終了することはないため注意が必要です(会社法499条1項)。
| 会社法 (債権者に対する公告等) 第499条 清算株式会社は、475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。 2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。 |
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