株主総会資料の電子提供制度

2022年8月4日更新

株主総会資料の電子提供制度について

1.会社法改正の目的

会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)が、2019(令和元)年12 月4日に成立し、同月 11 日に公布され、2021(令和3)年3月1日から施行されました。

この改正の目的は、会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るためとされています。これにより、日本企業のコーポレート・ガバナンスの向上、日本企業の競争力、日本企業に対する内外の投資家の信頼が更に高まり、日本経済の成長につながることが期待されています。

この改正の中で、株主総会資料の電子提供制度の創設支店の所在地における登記の廃止については、これまで施行されていませんでしたが、2022令和4)年9月1日の施行が予定されています。

今回は、株主総会資料の電子提供制度の創設についてみてみましょう。

2.株主総会資料の電子提供制度とは

株主総会資料の電子提供制度とは、株主総会参考書類等を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対し、ウェブサイトのアドレス等を書面により通知することによって、株主総会資料を提供することができる制度です。

株主総会資料の電子提供制度については、会社法 第三款 電子提供措置(同法325条の2から325条7)として規定が追加されました。これにより、株式会社は、株主総会の招集の手続を行う際に、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとる旨を定款で定めることができます。定款には、電子提供措置をとる旨を定めれば足りるとされています。

なお、株主総会参考書類等とは、以下のものをいいます(同法325条の2)。

① 株主総会参考書類

(議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類、同法301条1項)

② 議決権行使書面

③ 計算書類及び事業報告

④ 連結計算書類 

株式会社は、株主総会の日の3週間前の日、または招集の通知を発した日のいずれか早い日において、自社のウェブサイトに株主総会参考書類等の掲載を開始し(325条の3 1項)、株主総会の2週間前までに、ウェブサイトのアドレス等を記載した招集の通知を株主に発出することとされています(325条の4 1項、299条1項)。

3.この制度のメリット

この制度の創設により、株式会社は、印刷や郵送のために要する時間や費用を削減することができ、それに伴い、株主に対し、これまでよりも早期に充実した内容の株主総会資料を提供できるようになることなどが期待されています。

4.インターネットを使えない人はどうすればいいの?

一方で、インターネットの利用が困難である場合などにおいては、株主は、株式会社に対し、株主総会資料に記載すべき事項を記載した書面の交付を請求することができます(同法325条5)。

5.電子提供措置は義務なの?

公開会社、特に上場会社においては電子提供措置をとることは義務となります。なお、非公開会社でも電子提供措置をとることはできます(324条の4 1項)。

6.いつから利用できるの?

上場会社は、施行日から6か月経過後(2023年3月1日以降)に開催される株主総会から、電子提供措置をとる必要があります(社債、株式等の振替に関する法律(以下「振替法」)159条の2、会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」)10条3項)。

7.定款の変更

株主総会資料の電子提供制度を利用するには、定款にその旨を定める必要があります。定款を変更するためには、株主総会で定款変更決議を経る必要があります(振替法159条の2、会社法325条の2)。定款には、電子提供措置をとる旨を定めれば足りるものとされています。

なお、振替株式を発行している会社は、電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款変更決議をしたものとみなされます(整備法10条2項)。

非公開会社においては、電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款変更決議をしたものとみなされる旨の規定は無いため、株主総会において定款変更を決議をしたうえで、変更する必要があります。上場会社においても、実際に定款に当該規定を設定するには、株主総会において定款変更決議を経る必要があります。

8.電子提供措置の登記

電子提供措置をとする旨の定めは登記事項となります。

よって、以下のとおり、登記申請が必要となります。

①施行日において振替株式を発行している会社

上記のとおり、振替株式を発行している会社は、施行日を効力発生日とする電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款変更決議をしたものとみなされ、この場合、施行日から6か月以内に変更登記申請が必要となります(整備法10条4項)。(施行日より前にあらかじめ株主総会において定款変更決議をした場合も含まれます(法務省民商第378号令和4年8月3日通達)。)

※但し、施行日以降、当該定款変更登記をするまでの間に、他の登記をする場合は、同時に登記しなければなりません(整備法10条5項)。

②上記以外の株式会社

株主総会決議を経て定款変更した場合、定款変更の効力発生日から2週間以内に変更登記申請が必要となります(会社法911条3項12号の2、915条1項)

法務省民事局長「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(通達)


会社の登記に関するご相談は、こちらまでご連絡くださいませ。