近年、グローバル化が進む中、外国人や外国法人が不動産を買い受けるケースが増加しています。外国に住所を有する外国人や外国法人が不動産の登記名義人となる場合、その所在の把握に困難を伴うとの指摘もされています。今回は、日本に住所を有さない外国人や外国法人が不動産の登記名義人となる場合に必要となる住所証明情報の取り扱いについてみてみましょう。

外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて
目次
1.不動産登記申請における住所証明情報とは
2.日本に住所がない場合
3.何を添付すればよいか~外国人の場合~
4.公証人が作成した書面を取得できないとき~外国人の場合~
5.何を添付すればよいか~外国法人の場合~
6.公証人が作成した書面を取得できないとき~外国法人の場合~
7.外国語で作成された書面について
8.この取り扱いはいつから実施されるか
1.不動産登記申請における住所証明情報とは
住所証明情報とは:
土地や建物、マンションなどの不動産を購入した場合、購入した不動産の所有権の登記名義を書き換える手続きを行います。この登記申請の際、当該登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)の添付が必要となります。これを「住所証明情報」といいます。
※ 住所証明情報については、以下の法務局のHPをご参照ください。
具体例:
具体的には、日本に住所を有する方の場合は、「住民票の写し」などが該当します。
2.日本に住所がない場合
問題の所在:
所有権の登記名義人が外国に住所を有する事例が増加し、登記名義人の所在の把握に困難を伴うことがあるとの指摘がされていました。これまでも日本に住所を有さない外国人が不動産登記名義人となる場合も多くありましたが、住民票の写しの代わりに用意できる書類も外国によって異なる場合があり、実際に添付が必要とされる書類についてケースごとに運用上の幅が広くなっているとの指摘もありました。そこで、今回、法務省令により通達がなされました。〔令和5年12 月15 日付法務省民二第1596 号〕
※ 通達の詳細は、以下の法務省のHPをご参照ください。
3.何を添付すればよいか~外国人の場合~
外国に住所を有する外国人の場合:
外国に住所を有する外国人(以下、ここでは「外国人」といいます)が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合、以下①②のいずれかを添付します。
※読み易くするため、概略を記載しています。
① 外国人の本国又は居住国の政府が作成した書面
- これと同視できるものを含む
- 政府には領事を含む
又は
② 外国人の本国又は居住国の公証人が作成した書面+次の書類
パスポートがあるとき:
| ア | 上記②の書面の作成日又は当該申請の受付日において有効なパスポートのコピー |
| イ | 外国人の氏名、パスポートの有効期間、写真のページを含めること |
| ウ | 上記②の書面と一体となっていないパスポートのコピーの場合、原本と相違がない旨を記載し、外国人の署名又は記名押印がされていること |
パスポートがないとき:
| ア | パスポートを所持していない旨の上申書(外国人の作成にかかるもの) |
+
| イ | 外国人の本国等(本国又は居住国)政府が作成した書面又は電磁的記録(以下「書面等」)のコピー又は又は電磁的記録の内容を書面に出力したもの(以下「写し等」) 但し、以下の要件を満たすもの |
- 外国人の氏名の記載又は記録があること
- 上記②の書面の作成日又は当該申請の受付日において有効な書面等の写し等であること
- 上記③の書面と一体となっていない書面等の写し等の場合、原本と相違がない旨を記載し、外国人の署名又は記名押印がされていること
4.公証人が作成した書面を取得できないとき
Q:外国人の本国等の法制上の理由等のやむを得ない事情から、本国等の公証人が作成する書面を取得できない場合はどうすればよいのでしょうか。
A:その場合は、以下の書面を住所証明情報とすることができます。(①②③全て必要)
① 日本の公証人が作成した住所を証明する書面等
- 外国人がその住所が真実であることを宣誓した書面等について公証人が認証したもの
+
② パスポートのコピー
- 公証人作成の書面の作成日又は当該申請の受付日において有効なパスポートであること
- 外国人の氏名、有効期間、写真のページのコピーを含めること
- 公証人作成の書面と一体となっていない場合、原本と相違がない旨を記載し、外国人の署名又は記名押印がされていること
+
③ 上申書
- 本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨が記載されたもの
- 外国人の作成にかかるもの
5.何を添付すればよいか~外国法人の場合~
外国に住所を有する外国法人の場合:
次の①②いずれかを添付する必要があります。
① 外国法人が設立時に準拠した法令を制定した国の政府が作成した住所を証明する書面
- これと同視できるものを含む
- 政府には領事を含む
又は
②次の書面
外国法人が設立時に準拠した法令を制定した国の公証人が作成した住所を証明する書面
+
外国法人が設立時に準拠した法令を制定した国の政府が作成した次の書面
| ア | 外国法人の名称の記載又は記録があること |
| イ | 政府が作成した書面の作成日又は当該申請の受付日において有効な書面等の写し等であること |
| ウ | 政府が作成した書面と一体となっていない書面等の写し等の場合、原本と相違がない旨を記載し、外国法人の代表者(その他の宣誓供述を行う権限のある者)の署名又は記名押印がされていること |
6.公証人が作成した書面を取得できないとき~外国法人の場合~
Q:外国法人が設立時に準拠した法令を制定した国の法制上の理由等のやむを得ない事情から、当該国の公証人が作成する書面を取得できない場合はどうすればよいのでしょうか。
A:その場合は、以下の書面を住所証明情報とすることができます。(①②③全て必要)
① 日本の公証人が作成した住所を証明する書面等
- 外国法人が住所が真実であることを宣誓した書面等について公証人が認証したもの
+
② 外国法人の設立準拠法を制定した国の政府が作成した書面等の写し等
- 外国法人の名称の記載又は記録があること
- 政府が作成した書面の作成日又は当該申請の受付日において有効な書面等の写し等であること
- 政府が作成した書面と一体となっていない書面等の写し等の場合、原本と相違がない旨を記載し、外国法人の代表者(その他の宣誓供述を行う権限のある者)の署名又は記名押印がされていること
+
③ 上申書
- 設立準拠法国の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨
- 外国法人の代表者等の作成に係るもの
7.外国語で作成された書面について
Q:上記書類が外国語で作成されている場合は、そのまま法務局に提出しても良いでしょうか。
A: 外国語で作成された者については、その訳文を添付しなければなりません。なお、翻訳者に制限は無く、誰でも作成することができます。
8.取り扱いはいつから実施されるか
この通達による取扱いは、2024年(令和6年)4月1日以後にされる登記の申請について実施されるものとされています。
※ 通達の詳細は、以下の法務省のHPをご参照ください。
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この記事は、記載時点の情報に基づいています。必ず最新の法令を確認をご確認ください。