監査役の監査権限の範囲について

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監査役の監査権限の範囲

目次

1.監査役の設置について

2.監査役の権限と義務

3.監査役設置会社とは

4.監査役設置会社でない株式会社の株主の権限等

5.監査役の権限を会計監査権限に限定する定款の定め

6.留意点

1.監査役の設置について    

株式会社は、原則として、監査役を設置するかどうかを選ぶことができますが、取締役会設置会社及び会計監査人設置会社は、監査役を置かなければなりません(会社法327条2項・3項)。

但し、非公開会社の取締役会設置会社で、会計参与を置く場合は、監査役を置かないことができます。

2.監査役の権限と義務    

監査役には、原則として、業務監査権限会計監査権限があります。

監査役の権限:    

  • 監査役は、取締役、会計参与の職務の執行を監査する業務監査権限を有します(会社法381条1項)。
  • 監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければなりません(同条項)。
  • また、監査役はいつでも、取締役、会計参与、支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(同条2項)。
  • 監査役は、職務を行うため必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求め、業務及び財産の状況の調査をすることもできます(同条2項)。

また、監査役は次のような義務を負います。

取締役への報告義務:    

  • 監査役は、取締役が不正の行為をし、又はそのおそれがあると認めるとき、法令・定款に違反する事実、若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)に報告しなければなりません(会社法382条)。

取締役会へ出席義務:    

  • 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません。
  • 但し、監査役が2人以上ある場合で、特別取締役による議決の定めがあるとき(会社法373条1項)は、監査役の互選で、監査役の中から特に同条2項の取締役会に出席する監査役を定めることができます(同法383条1項)。
  • 監査役は、必要があると認めるときは、取締役に対し、取締役会の招集を請求することができます(同条2項)。
  • 監査役から取締役会の招集請求があった日から、5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監査役は、取締役会を招集することができます(同条3項)。
  • 同法383条2項・3項の規定は、同法373条2項(特別取締役による取締役会の決議)の取締役会については、適用されません。

株主総会に対する報告義務:    

  • 監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければなりません(会社法384条)。
  • この場合、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません(同条項)。

監査役による取締役の行為の差止め:    

  • 監査役は、取締役が目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合に、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます。(会社法385条)。

3.監査役設置会社とは    

監査役設置会社とは、会社法2条9号において定義されています。

会社法
(定義)
2
⑨監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。

上記条文のとおり、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社(会社法389条1項)は、監査役設置会社には該当しないことになります。

但し、当該定款規定がある株式会社においても、登記上は、監査役設置会社である旨の登記をする必要があります(会社法911条3項17号)。

会社法
(株式会社の設立の登記)
第911条
3項: 第1項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
⑰監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある 株式会社を含む。)であるときは、その旨及び次に掲げる事項
 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨
 監査役の氏名 

また、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨も、登記事項となります。

次に、監査役設置会社ではない株式会社について見てみましょう。

会社法では、業務監査権限を有する監査役等(監査役、監査等委員、監査委員)を置かない株式会社については、監査役等の業務監査に代えて、株主の監査権限を強化するため、株主に以下のような(全てではありません)権限を与え、株式会社の業務執行を直接監督することができるようにしています。これは、中小企業におけるコーポレート・ガバナンスを強化することが目的とされています。

株主による招集の請求:    

  • 取締役会設置会社(監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く)の株主は、取締役が取締役会設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあると認めるときは、取締役会の招集を請求することができます(会社法367条1項)。

株主による閲覧・謄写の請求:    

  • 株主は、権利行使のため必要なときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、議事録(書面決議に関する意思表示を含む)の閲覧・謄写の請求をすることができます(会社法371条2項)。
  • これに対し、監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社において、上記の閲覧・謄写請求をする場合は、「裁判所の許可を得て」請求する必要があります(同条3項)。

株主による取締役の行為の差止め:    

  • 6箇月(下回る期間を定款で定めた場合はその期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、又はそのおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に「著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます。(会社法360条1項)。
  • 公開会社でない株式会社は株式の継続保有要件はなく、「株主」が請求することができます(同条2項)。
  • 監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、「著しい損害」ではなく、「回復することができない損害」が生ずる恐れがあるときに、請求できます(同条3項)。

公開会社でない株式会社(監査役会設置会社・会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(会社法389 1項)。

この定款規定を置く株式会社では、前述の「2.監査役設置会社でない株式会社の株主の権限等」のとおり株主の権限が強化され、一方で監査役の権限は以下のように縮減されます。

  • 監査役は取締役会に出席する義務はありません(389条7項、383条)
  • 株式会社は取締役会の招集通知を監査役に発する必要はありません(368条1項)
  • 取締役会の招集手続の省略について監査役の同意は不要です(368条2項)
  • 取締役・監査役等による役員等の株式会社に対する損害賠償責任の免除に関する定款の定めを置くことができません(426条1項)

留意点:

  1. 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めたときは(会社法389 1項)、その旨の登記を申請することが必要です(同法911条3項17号イ)。
  2. 既存の監査役について、監査役等による役員等の株式会社に対する損害賠償責任の免除に関する定款の定めを置いている株式会社が定款を変更して、監査役の権限を会計監査権限に限定する旨を定めたときは、監査役等による役員等の株式会社に対する損害賠償責任の免除に関する規定を抹消する登記を申請する必要があります。

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