消滅時効について(改正民法)

売掛金未払いのご相談に関連してご質問があった「時効」について触れたいと思います。

「時効」に関する民法の規定は改正がなされ、2020年4月1日より施行されております。

消滅時効について(改正民法)

目次

1.消滅時効とは

2.消滅時効期間はどう変わったの?

3.商事消滅時効が廃止に

4.時効に関する用語の改正

5.いつから適用されるの?

1.消滅時効とは

物を購入した場合は、その代金を支払います(民法555条)。また、お金を借りた場合は、返済する必要があります(民法587条、587条の2)。売買代金の支払いを請求する権利を売買代金請求権、貸金の返済を請求する権利を貸金返還請求権といいますが、一定の期間を過ぎてしまうとこれらの権利を行使できなくなることがあります。

権利を行使できる時から一定期間が経過し、相手方が時効を主張すると権利が消滅してしまいます。これを消滅時効といい、改正前の民法167条では、以下のとおり規定されていました。

  1. 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
  2. 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

また、下記のとおり、職業別の短期消滅時効が規定されていました。

改正前民法(170条-174条)

1年2年3年
飲食代 運送料
宿泊料 入場料
動産の損料 等
習い事の月謝
売掛金 等
弁護士費用
診療報酬債権
工事代金債権 等

2.消滅時効期間はどう変わったの?

改正民法では、上記にある短期消滅時効が廃止され、消滅時効期間は、次のとおりとなりました。

改正後民法

主観的消滅時効期間権利を行使できることを知った時から(166条1項1号)5年
客観的消滅時効期間権利を行使できる時から(同条項2号)
生命・身体に対する損害賠償(167条)
10年
20年

・主観的消滅時効期間と客観的消滅時効期間のいずれか早くに到来した時に消滅時効が完成

・債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効消滅(166条2項)

・確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、時効期間は10年(169条)

3.商事消滅時効が廃止に

会社間の取引によって生じた債権については、民法ではなく商法が適用されます。民法改正前は、民事消滅時効が10年であるのに対し、商事消滅時効が5年であったため、両者間に相違がありました。

上記のとおり、改正民法では、商事消滅時効と同じく5年の消滅時効が定められたため、商事消滅時効は廃止され、会社間の取引にも、民法の消滅時効が適用されることとなりました。

4.時効に関する用語の改正

以下のように、時効に関する用語についても改正されました。

改正前改正後
時効の中断時効の更新
時効の停止時効の完成猶予

改正前改正後
中断(更新)事由 裁判上の請求
差押え
仮差押え
仮処分
債務の承認 等
裁判上の請求
差押え
債務の承認 等
停止(完成猶予)事由催告(6カ月)
天災(2週間)
催告(6カ月)
天災(3カ月)
仮差押え(6カ月)
仮処分(6カ月)

時効の中断:時効の完成に必要な期間の進行が中断し、既に進行した期間が無に帰すこととなる。

時効の停止:時効の進行が停止し、時効の完成が猶予され、経過した時効期間は有効に維持される。

5.いつから適用されるの?

民法改正の施行日(2020年4月1日)よりも前に生じた債権については、改正前の民法の消滅時効期間によるとされています(民法改正附則)。債権がいつ成立したものか確認することが重要です。


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