後見制度③~申立て~について

後見制度の続きです。今回は、法定後見の申立てを中心にみてみましょう。


後見制度<申立て>について

目次

1.申立ての管轄

2.申立てができる人

3.申立てに必要な書類

4.必要な費用

5.申立て手続きの流れ

6.成年後見人等には誰が選任されるか?

7.成年後見人等の責任

8.家庭裁判所への申立てが必要な場合

1.申立ての管轄

本人(認知症等によって判断能力が不十分な方)の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に対し行います。

・東京都23区内及び東京都内の諸島にある場合:東京家庭裁判所本庁

・上記以外の東京都の市町村にある場合 :東京家庭裁判所立川支部

 

2.申立てができる人

本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、任意後見受任者、成年後見監督人等、市区町村長、検察官です。 

3.申立てに必要な書類

1□ 後見・保佐・補助開始等申立書
□ 申立事情説明書口親族関係國
□ 本人の財産目録及びその資料
□相続財産目録及びその資料(本人が相続人となっている遺産分割未了の相続財産がある場合のみ)
   □預貯金通帳のコピー(銀行名・支店名,D座名義人,D座番号及び直近2か月 
   分の残高が記載されたページ)
   □保険証券のコピー(本人が契約者又は受取人になっているもの)
   □株式・投資信託等の資料のコピー(その内容,数が記載された残高報告書・ 
   通知書等のコピー)
   □不動産の全部事項証明書(原本,申立日から3か月以内のもの)
   □債権・負債等の資料のコピー
□本人の収支予定表及びその資料
   □収入に関する資料のコピー(年金通知書のコピー,株式配当金の通知書のコ
   ピー等)
   □支出に関する資料のコピー(施設作成の領収書(2か月分)のコピー,住居費
   (住宅ローン)の領収書(2か月分)のコピー,納税通知書のコピー等)
□親族の意見書
□後見人等候補者事情説明書
   □後見人等と本人との間で.金銭の貸借.担保提供.保証.立替えがある湯合
   にはその関係資料
2□診断書(成年後見制度用)   作成後3か月以内のもの
□診断書付票          作成後3か月以内のもの
□本人情報シート(コピー)
3□本人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)  申立日から3か月以内のもの
4□本人の住民票又は戸籍の附票       申立日から3か月以内のもの
□後見人等候補者の住民票又は戸籍の附票  申立日から3か月以内のもの
※本人と後見人等候補者が一緒に記載されている場合は1通で可。
※外国籍の方は、国籍・地域の記載された住民票
5□本人が登記されていないことの証明書   申立日から3か月以内のもの
  証明事項(後見・保佐・補助・任意後見を受けていないこと)が全て記載され
  ているもの
6□愛の手帳のコピー(交付を受けている方のみ)
  □表紙(「愛の手帳」と記載されたところ)、 氏名、総合判定の記載のあるペ
  ージのコピー

 ※ いずれもマイナンバーの記載のないものである必要があります。

4.必要な費用

① 申立て時に必要な費用

収入印紙

①申立手数料    800円分
②登記手数料    2,600円分

※ 申立て書類と一緒に提出します。

※ 保佐・補助で代理権や同意権の付与の申立てもする場合は、それぞれ①の800円分を追加)

郵便切手(送達・送付費用)

後見の場合の内訳と合計500円X3枚
100円X5枚
84円X10枚
63円X4枚
20円X5枚
10円X6枚
5円X2枚
1円X8枚
合計3270円          
保佐・補助の場合の内訳と合計500円X4枚
100円X5枚
84円X15枚
63円X4枚
20円X5枚
10円X7枚
5円X4枚
1円X8枚
合計4210円

② 申立後に必要となる場合がある費用

鑑定費用:ケースにより異なりますが、一般的に10~20万円程度  

※ 手続費用については、一般の家事事件では申立人が負担することが原則ですが、後見等  開始の手続の揚合は.申立手続を行うことが本人の保護となりその利益になると考えられることから、東京家庭裁判所では、下記手続費用については、後見等開始審判時に本人負担とする裁判をする運用です(後見開始等申立書の「手続費用の上申」欄において、「手続費用については、本人の負担とすることを希望する。」にレ点が付されていない場合も同様)。後見等開始審判確定後、成年後見人等に対し、本人の財産の中から本人負担とされた手続費用額の償還を求めることができます。)

③ 申立てを専門職に依頼する場合の費用

申立ての手続きや書類の作成を専門職に依頼する場合は、上記に加え、専門職に支払う報酬費用が生じます。  

5.申立て手続きの流れ

必要書類・費用の準備

  ↓

面接の予約※①

  ↓

家庭裁判所への申立て

  ↓

審理(書類審査、面接、鑑定※②、親族への意向照会※③、本人・候補者調査※④)

  

審判・確定・登記※⑤

  ↓

初回報告※⑥

  ↓

定期報告※⑦

  ↓

後見等の終了


① 面接の予約

 東京家庭裁判所では、原則、申立人及び成年後見人等候補者から、申立てに至る事情などを聴くために、調査官による面接を実施しています。

 面接は申立て当日に実施していただけるので、申立て書類や費用の準備が整った段階で、家庭裁判所に電話をし、面接の予約を行います。

 面接では、申立てに至る事情の他、本人の生活状況、判断能力、財産状況、本人の親族らの意向などが聞かれます。財産状況については、提出する財産目録と収支状況報告書に基づき聞かれますが、記載する内容は、申立ての時点で把握が可能な範囲でよいものとされています。

② 鑑定

 鑑定とは、本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するための手続です。申立時に提出する診断書とは別に、家庭裁判所が医師に鑑定依頼をする形で行われます 。

 後見・保佐の場合は法律上、原則鑑定が必要ですが、診断書の内容などを総合的に考慮して、鑑定が省略されることもあります。鑑定を行うことになった場合、家庭裁判所から連絡がありますので、定められた期限内に費用を納める必要があります。

③ 親族への意向照会

 家庭裁判所は、審理の参考とするため、本人の親族に対して書面等により申立ての概要及び成年後見人等候補者の氏名を伝え、これらに関する意向を照会する場合があります。

④ 本人・候補者調査

 成年後見制度では、本人の意思を尊重するため、申立ての内容などについて本人から意見を直接伺う「本人調査」をする場合があります 。
 本人調査の際は、本人が家庭裁判所に出向く必要があることがあります。入院、体調等の事情により出向くことが難しい場合は、家庭裁判所の担当者が入院先等に直接訪問していただける場合があります。
成年後見人等候補者の適格性に関する調査も併せて行われる場合があります。

 保 佐・補助の場合で、代理権を付与する場合は、本人同意が必要となります。この同意については、本人調査の中で確認が行われます。 

⑤ 審判・確定・登記

 鑑定や調査終了後、家庭裁判所により、後見等開始の審判がなされ、成年後見人等が選任されます。成年後見人等は複数名選任されることもあり、成年後見等監督人が選任されることもあります。

 申立てから審判までに要する期間は、おおむね1か月~2か月とされています。事案の内容により、それ以上要する場合もあります。審判の内容は、申立人、本人、成年後見人等に書面で通知されます。

 申立人、本人、利害関係人は、審判の内容に不服がある場合、審判書が成年後見人等に届いてから2週間以内に不服申立て(即時抗告)をする必要があります。不服の申立てがない場合は、審判の効力が確定します。但し、成年後見人等の選任(誰が成年後見人に選任されたか)については、不服申立てをすることはできません。

 後見等開始審判の確定後、家庭裁判所の嘱託により、審判内容が登記されます。

⑥ 初回報告

 成年後見人に選任された者(保佐人・補助人で財産管理に関する代理権がある者を含む)は、まず本人の財産状況を調査し、財産目録及び年間収支予定表を作成し、資料を添えて、家庭裁判所に提出しなければなりません。提出が終わるまでは、急を要する行為以外はしないようにする必要があります。

⑦ 定期報告

 成年後見人等は、定期的、かつ、自主的に、本人の現状や現在の問題等について、報告書、財産目録、裏付けとなる通帳や領収書類等のコピーを家庭裁判所に提出しなければなりません。報告書は、家庭裁判所の書式(家庭裁判所ウェブサイトからダウンロードすることができます)に記入します。司法書士等の専門職が成年後見人等監督人に選任された場合は、報告書は成年後見等監督人に提出します。

⑧ 後見等の終了

以下の場合に、後見等は終了します。

・本人が死亡したとき

 本人が死亡した場合には、速やかに家庭裁判所に本人の除籍謄本又は死亡診断書のコピーを送付し、東京法務局後見登録課に後見終了登記の申請をします。本人の相続人に管理終了の報告をし、管理していた財産を引き継ぎます。

・成年後見人等の辞任

 病気などやむを得ない事情がある場合は、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。但し、辞任しても後見等手続は終了しないため、「後見人等辞任の許可の申立て」のほか、別途後任の「後見人等選任の申立て」が必要となります。辞任が許可され、新たな成年後見人等が選任された場合には、管理していた財産を後任の成年後見人等に引き継ぎます。

・本人の能力が回復したとき

 本人の能力が回復し後見等の必要がなくなった場合は、家庭裁判所に後見等開始審判の取消の申立てをすることができます。取消が認められれば、それまで成年後見人等が管理していた財産を本人に引き継ぎます。

6.成年後見人等には誰が選任されるか?

 成年後見人等になるには、成年後見制度の内容や成年後見人等の職務を理解し、責任をもって引き受ける必要があります。家庭裁判所に選任を一任することもできます。
 成年後見人等は、家庭裁判所が、本人の心身の状態、生活及び財産の状況、候補者と本人との利害関係の有無、本人の意向などの事情を総合して職権で選任します(民法843条1項、4項等)。申立書に記載された候補者が必ず選任されるとは限りません。
 本人の財産管理をより適正に行う観点から、専門的な知見を有する専門職が関与する必要があると判断された場合には、司法書士や弁護士等といった専門家を成年後見人等に選任したり、このような専門家を成年後見等監督人として選任することがあります。これらの選任についての家庭裁判所の判断には、不服申立てをすることはできません。
 成年後見人等及び成年後見等監督人に対する報酬は、家庭裁判所が付与の当否及び付与の金額を決定し、本人の財産から支払われます。

7.成年後見人等の責任

 成年後見人の職務は、本人が亡くなられるか、本人の能力が回復するまで継続します。成年後見人等になった以上、親族であっても、他人の財産を預かり、管理しているという自覚をもち、責任をもって職務を遂行する必要があります。本人の財産を成年後見人等や親族の名義で管理したり、成年後見人等や親族に贈与、貸与するなど、本人の不利益となるような管理、処分は原則としてできません。また、遺産分割を行う際は、原則、本人の法定相続分を確保する必要があります。

 財産を不正に処分すると、成年後見人等を解任されるだけでなく、損害賠償請求などの民事責任や、業務上横領などの罪で刑事責任を問われることがあります。

8.家庭裁判所への申立てが必要な場合

成年後見人等が一定の行為をする場合は、事前に家庭裁判所への申立てが必要です。

①居住用不動産の処分許可の申立て

本人の居住用不動産の売却、賃貸、抵当権設定、建物の取壊し、賃借物件の

賃貸借契約の解除の場合に必要となります。
 

なお、居住用不動産とは、本人が居住するための建物又はその敷地をいい、

現に住んでいる建物等だけでなく、施設や病院から出たときに住むべきものを含みます。  

② 特別代理人(臨時保佐人,臨時補助人)の選任の申立て

本人と成年後見人等がどちらも相続人である場合に遺産分割協議をしたり、

成年後見人等が本人所有の不動産を買い取る等、本人と成年後見人等との間において利益が相反する場合に必要となります。

③ 報酬付与の申立て

成年後見人等が本人の財産から報酬を求める場合に必要となります。


今回は法定後見の申立てを中心に、終了までの流れについて記載致しました。

後見制度についてのお問い合わせは、こちらまでご連絡ください。