死後事務について~成年後見人の権限の範囲~

核家族化や高齢化が進み、一人暮らしのご高齢者も増えました。成年後見を利用している場合などにおいて、その方が亡くなられた後の葬儀などの事務、いわゆる死後事務は、誰が行うのでしょうか。


死後事務について

目次

1.死後事務とは

2.成年後見人は事後事務を行うことができるか

3.成年後見人が行うことができる範囲とは 


1.死後事務とは

死後事務として、死亡届の提出などがあります。

死亡診断書や死体検案書を取得の上、亡くなったことを知った日から7日以内に死亡届を提出する必要があります。国外で亡くなったときは、知った日から3か月以内です(戸籍法86条)。

その他の死後事務:

・病院の診療費・入院費の支払いや入院預託金の精算

・遺体の引き取りや、遺体の安置・保存・埋葬について葬儀社への依頼

・火葬及び埋葬の許可申請、許可書の受け取り

・私物・残置物の引き取り及び不用品の廃棄処分の依頼 など

 

2.成年後見人は死後事務を行うことができるか

成年後見は被後見人の死亡と同時に終了するので、死後事務は相続人が行うのが原則です。しかし、相続人がいない場合や、遠方にいるため行えない場合は、成年後見人が一定の死後事務を行う場合があります。

上記の死後事務のうち、死亡届については、同居の親族の他、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も行うことができます(戸籍法87条2項)。

成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の改正(2016年4月13日公布、同年10月13日施行)により、成年被後見人が亡くなった後も、成年後見人は一定の範囲の事務を行うことができることになりました(民法873条の2)。

 

3.成年後見人が行うことができる範囲とは

成年後見人は、どのような死後事務を行うことができるのでしょうか。

① 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為(民法873条の2 1号)

 ・相続財産に属する債権の時効が迫っているときにおいて、時効の更新を行うこと

 ・相続財産に属する不動産が倒壊しそうな場合に修繕を行うこと など

② 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る)の弁済(同 2号)

 ・入院費や診療代の支払い など

③ 上記①②以外の、その他相続財産の保存に必要な行為(同 3号)

 ・火葬又は埋葬に関する契約の締結

 ・電気・ガス・水道等の契約の解約

 ・債務の弁済のため、預貯金口座の払い戻し など

 

また、留意すべき事項として、以下が挙げられます。

・③に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。

・上記行為ができるのは、相続人が相続財産を管理することができようになるまでです。

・成年被後見人の意思に反することが明らかなときは、行うことはできません。

・保佐人、補助人、任意後見人は行うことはできません。

・葬儀を執り行うことはできないと考えられています。 


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