取締役会議事録への押印

取締役会を設置している株式会社は、取締役会を開催した時は、議事録を作成し、保存する必要があります。本日は、取締役会議事録に押す印鑑について見てみましょう。

Photo by MART PRODUCTION on Pexels.com

取締役会議事録への押印

目次

1.取締役会の開催

2.取締役会議事録の作成

3.取締役会議事録への押印

4.みなし取締役会決議

1.取締役会の開催

取締役会の開催は義務:    

取締役会設置会社は、定期的に、取締役会を開催する必要があります。

 

開催するのはいつでもいいの?:

取締役会は、必要に応じて、いつでも開催することができます。
では、株主総会と同じように、年に1回の開催でも良いのでしょうか。

答えは ‘NO’ です。

取締役会は、3ヵ月に1回以上、つまり最低でも年に4回以上、開催する必要があります(会社法363条2項)。

’関連条文’
会社法

(取締役会設置会社の取締役の権限)
第363条 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
  代表取締役
 二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。

      

2.取締役会議事録の作成

議事録の作成

取締役会を開催した場合は、その議事について、法務省令で定めるところにより、議事録を作成する必要があります(会社法369条3項)。 

                

議事録の備え置き:

取締役会議事録は、書面または電磁的記録として作成し、取締役会の日から10年間、本店に備え置かなければなりません(会社法371条1項)。

3.取締役会議事録への押印

議事録が書面の場合:

取締役会議事録が書面で作成されているときは、出席した取締役および監査役は、署名または記名押印しなければなりません(会社法369条3項)。

   

議事録が電磁的記録の場合:

取締役会議事録が電磁的記録で作成されているときは、出席した取締役および監査役は、法務省令で定める署名または記名押印に代わる措置、いわゆる電子署名をしなければなりません(会社法369条4項、会社法施行規則225条)。

4.みなし取締役会決議

取締役会の決議の省略

取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る)の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます(会社法370条)。

いわゆる、「書面決議」や「みなし決議」と言われているものです。

この定款規定がある場合は、実際に取締役が集まって会議をする必要がないため、取締役が海外に出張中であったり居住している場合、パンデミックで実開催が難しい場合でも、必要な決議を行うことができます。

なお、これには以下の留意点があります:

・取締役全員の同意があること
・定款に規定が置かれていること
・監査役がいる場合は、監査役が提案に対し異議を述べていないこと

   

取締役会決議の省略の場合の押印

会社法370条により決議があったものとみなされる場合、実際には取締役会は開催されませんが、この場合でも、取締役会議事録は作成する必要があります。370条のみなし決議の場合、取締役会に実際に出席した取締役や監査役はいないということになります。この場合の取締役会議事録には、会社の代表印を捺印します。

  

代表取締役選定の登記申請の添付書類

例として、代表取締役の選定に関する決議について考えてみましょう。

370条に基づき取締役決議が省略された場合、代表取締役選定にかかる登記申請には、取締役会議事録に従前の代表取締役が会社代表印で押印していない限り、取締役会議事録に取締役全員が実印で押印し、取締役全員の印鑑証明書を添付する必要があります(商業登記規則第61条6項)。取締役会議事録には会社の代表印のみを押印し、取締役全員の同意があったことを証する書面として、取締役全員が実印を押した同意書を添付することもできます。印鑑証明書の添付は必要です。

なお、この場合の監査役の実印での押印と印鑑証明書の添付は不要とされています。


当事務所では、電磁的記録を添付書類とする完全オンライン申請にも対応しております。


ご相談は、お問い合わせフォームからご連絡くださいませ。

この記事は、記載時点の情報に基づいています。必ず最新の法令を確認をご確認ください。